相続した実家が空き家になっていても、遠方に住んでいる、相続人同士で方針が決まっていないなどの理由から、すぐに売却や解体を決められるとは限りません。
しかし、何も決まっていないことと、管理せずに放置することは別です。
空き家を長期間確認しないままにすると、屋根や外壁の劣化、庭木や雑草の繁茂、害虫・害獣、不法侵入、不法投棄、近隣トラブルなどにつながることがあります。
適切な管理がされず、周辺への悪影響が生じるおそれがある場合は、自治体が状態を確認し、管理不全空家や特定空家として指導・勧告などの措置を行う場合もあります。
まず必要なのは、売却や解体を急いで決めることではありません。
現在の建物と敷地の状態、近隣への影響、名義と相続人、自治体から届いた連絡の内容を確認し、危険や迷惑が生じている部分から対応することが大切です。
この記事で分かること
- 空き家を放置した場合に起こり得る問題
- 管理不全空家と特定空家の違い
- 自治体からの連絡と正式な指導・勧告の違い
- 固定資産税の住宅用地特例に影響する場合
- 自治体から連絡を受けた後の対応手順
- 管理、修繕、売却、解体を考える前の確認事項

空き家相談では、自治体から電話が来ただけで「特定空家に認定された」と不安になる方もいました。まず、状況確認なのか、助言・指導・勧告などの正式な措置なのかを担当者へ確認しましょう。
空き家を放置すると起こり得ること
人が住まなくなった建物は、小さな異常に気づきにくくなります。
すぐに倒壊するとは限りませんが、雨漏りや草木の繁茂などを長期間見落とすことで、建物や周辺環境への影響が大きくなる場合があります。
建物の劣化・倒壊・部材飛散
特に確認したいのは、屋根、外壁、雨どい、窓、玄関、基礎などです。
次のような異常が起こることがあります。
- 屋根材のずれや落下
- 外壁材の剥がれや飛散
- 雨どいの外れ
- 窓ガラスの割れ
- 雨漏り
- 柱、床、天井の腐食
- 基礎や外壁のひび割れ
- 塀や物置の傾き
屋根材や外壁材が道路や隣地へ落下するおそれがある場合は、建物の内部へ無理に入らず、道路や敷地外など安全な場所から確認してください。
危険性が高い場合は、自治体や建築・修繕の専門業者へ相談します。
庭木・雑草・枝の越境による近隣トラブル
庭木や雑草は、建物本体の老朽化より先に近隣から連絡を受けることがあります。
たとえば、次のような状態です。
- 枝が隣地へ越境している
- 枝やつるが道路や歩道へ出ている
- 標識やカーブミラーが見えにくくなっている
- 雑草で見通しが悪い
- 枯れ枝が落下しそう
- 落ち葉や種が隣地へ入る
- 雑草が害虫の発生場所になっている
- 草木のため敷地へ入れない
近隣から連絡を受けた場合は、すぐに責任の有無を争うのではなく、どの場所が問題になっているか、道路や住宅へどのような影響が出ているかを確認します。
庭木の枝が隣地や道路へはみ出している、雑草について自治体や近隣から連絡を受けた場合は、まず危険箇所と必要な作業を確認します。
遠方からの確認方法や業者選びは、次の記事で整理しています。


草木の問題は、建物の老朽化より早く近隣から連絡が来ることがあります。一度刈るだけで終わらせず、次に誰がいつ確認するかまで決めておくと、同じ問題を繰り返しにくくなります。
害虫・害獣・悪臭などの衛生問題
管理されていない空き家では、ハチ、ネズミ、野生動物などが入り込むことがあります。
家財やごみが残っている場合は、悪臭、害虫、腐敗などの問題につながる可能性もあります。
主な確認項目は次のとおりです。
- 軒下や屋根裏のハチの巣
- 動物が出入りした跡
- ふんや悪臭
- 生ごみや残置物
- 水たまり
- 排水設備や浄化槽の状態
- 室内のカビ
- 害虫の発生
ハチの巣や危険な動物がいる場合は、自分で近づかず、専門業者へ相談してください。
不法侵入・放火・不法投棄などの防犯問題
郵便物がたまっている、草が伸びている、窓が割れている状態が続くと、人が出入りしていないことが外から分かりやすくなります。
その結果、次のような問題が起こる可能性があります。
- 不法侵入
- 不法投棄
- いたずら
- 盗難
- 放火
- 無断使用
施錠状態、窓ガラス、郵便物、不法投棄、侵入の形跡を定期的に確認しましょう。
災害後の破損を見落とす
台風、大雨、大雪、地震の後は、屋根材、外壁、雨どい、窓、塀などが破損する場合があります。
遠方に住んでいると、破損に気づくまで時間がかかります。
災害後は、親族、地元の管理業者、空き家管理サービスなどへ外観確認を依頼する方法もあります。
ただし、危険な屋根や建物内部へ無理に入るよう依頼しないでください。
管理不全空家と特定空家の違い
管理不全空家と特定空家は、適切に管理されていない空き家に関係する制度上の区分です。
すべての空き家が自動的に該当するわけではありません。
自治体が建物や敷地の状態、周辺への影響などを確認し、個別に判断します。
管理不全空家とは
管理不全空家は、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態の空き家です。
たとえば、屋根や外壁が傷み始めている、草木の繁茂などにより周囲へ悪影響を及ぼすおそれがあるなど、管理が十分でない状態が考えられます。
自治体は、所有者等に対して必要な管理を行うよう指導する場合があります。
指導を受けても状態が改善されず、必要と判断された場合は、勧告につながる可能性があります。
ただし、建物が古い、雑草が伸びているという一つの事実だけで、必ず管理不全空家になるわけではありません。
自治体が現地の状況や周辺への影響を確認して判断します。
特定空家とは
特定空家は、次のような状態にある空き家が対象になる場合があります。
- 倒壊など保安上の危険がある
- 衛生上有害となるおそれがある
- 景観を著しく損なっている
- 周辺の生活環境を守るため放置が不適切
特定空家に該当すると判断された場合は、自治体から助言・指導、勧告、命令などの措置につながることがあります。
どの措置が行われるかは、空き家の状態や所有者の対応などによって異なります。
自治体から連絡が来ただけで認定とは限らない
自治体から電話、手紙、訪問などがあっただけで、直ちに管理不全空家や特定空家として認定されたとは限りません。
近隣から相談があり、所有者へ状況を確認している段階や、任意の改善をお願いしている段階の場合もあります。
一方で、法律や条例に基づく正式な助言・指導・勧告などの場合もあるため、連絡を放置せず、自治体へ今回の連絡の位置づけを確認してください。
具体的に確認する内容は、後述する「自治体から連絡を受けたときの初動」で整理します。

すぐに売却や解体を決められなくても、自治体への返信と現地確認は先にできます。「確認を始めています」と伝え、次に連絡する時期を決めておくことが大切です。
勧告を受けた場合の住宅用地特例
住宅が建っている土地には、要件に応じて固定資産税等の住宅用地特例が適用される場合があります。
ただし、管理不全空家または特定空家について自治体から勧告を受けた土地は、住宅用地特例の対象外となる場合があります。
単に空き家になったことや、自治体から電話を受けたことだけで、直ちに住宅用地特例から外れるわけではありません。
国土交通省も、管理不全空家または特定空家について勧告を受けた土地は、住宅用地特例の対象から除外される場合があると案内しています。
実際の税額や適用状況は、土地の状態や自治体の課税によって異なります。空き家がある市区町村の税務担当窓口へ確認してください。
固定資産税と住宅用地特例の詳しい扱いは、次の記事で整理しています。

命令・行政代執行に進む場合
特定空家に対する命令を受けても必要な措置が行われない場合など、法律上の要件と手続きを経て、行政代執行が行われる可能性があります。
行政代執行では、自治体が所有者等に代わって、解体、修繕、立木竹の伐採などの措置を行う場合があります。
その費用は、所有者等へ請求される可能性があります。
「行政が無料で解体してくれる制度」ではありません。
また、行政代執行は空き家問題を解決する一般的な方法ではなく、すべての管理不全空家や特定空家で行われるものでもありません。
通知を受けた場合は放置せず、求められている対応と期限を自治体へ確認しましょう。
自治体から連絡を受けたときの初動
自治体から連絡を受けた場合は、空き家全体の処分方針が決まっていなくても、連絡内容の確認と危険箇所への対応を先に進められます。
通知・連絡の内容と期限を確認する
電話の場合は、次を記録します。
- 連絡を受けた日時
- 担当部署
- 担当者名
- 問題とされている場所
- 求められている対応
- 回答期限
文書の場合は、文書名、発出日、根拠となる法律や条例、回答期限を確認します。
文書を紛失しないよう保管し、相続人や共有者にも共有してください。
現地の危険と周辺への影響を確認する
自治体から次の情報を聞きます。
- 屋根や外壁の破損
- 草木や枝の越境
- 道路や隣地への影響
- 害虫・害獣
- ごみや悪臭
- 不法侵入
- すでに被害が発生しているか
- 現地写真があるか
遠方ですぐ行けない場合は、親族、空き家管理サービス、地元業者などに、道路や敷地外からの写真撮影を依頼する方法があります。
倒壊や床抜けなどの危険がある場合は、無理に建物へ入らないでください。
対応を始めたことを自治体へ伝える
すぐに修繕日や解体日を決められなくても、確認を始めたことは伝えられます。
たとえば、次のように連絡します。
「現地の状態を確認し、必要な作業について業者へ相談します。手配状況が分かり次第、改めて連絡します」
対応方針が決まっていないことを理由に、自治体への返信まで止めないことが大切です。
相続人・共有者の連絡窓口を決める
相続人や共有者が複数いる場合は、自治体との連絡窓口を一人決めましょう。
次の役割は分けても構いません。
- 自治体との連絡
- 現地確認
- 鍵の管理
- 業者との連絡
- 費用の一時負担
- 相続人間への報告
費用負担や今後の方針が決まっていなくても、危険箇所の確認や自治体への返信は先に進められます。
行政が代行する範囲ではないことを理解する
自治体は、空き家の状態確認、所有者等への情報提供、助言・指導などを行う場合があります。
一方、原則として次の作業を所有者に代わって行う窓口ではありません。
- 相続人同士の話し合い
- 遺産分割協議
- 相続登記
- 草刈り・剪定業者との契約
- 修繕業者との契約
- 不動産会社の選定
- 解体費用の支払い
- 近隣との損害賠償交渉
必要に応じて、法務局、司法書士、弁護士、不動産会社、管理会社、修繕・解体業者などへ相談先を分けます。

行政は状態の確認や助言・指導を行う場合がありますが、相続人同士の話し合い、登記、業者との契約まで代行するわけではありません。必要な相談先を分けて進めましょう。
最初に確認するチェックリスト
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 名義 | 土地と建物の登記名義人 |
| 相続人 | 現在の相続人、自治体との連絡窓口 |
| 建物 | 屋根、外壁、雨どい、窓、基礎、塀の状態 |
| 敷地 | 庭木、雑草、枝の越境、不法投棄 |
| 衛生 | 害虫、害獣、悪臭、ごみ |
| 防犯 | 施錠、侵入の形跡、窓割れ、郵便物 |
| 近隣への影響 | 道路や隣地への危険、すでに起きている被害 |
| 費用負担 | 管理、草刈り、修繕などを一時的に負担する人 |
| 今後の方針 | 管理、修繕、売却、買取、解体 |
名義と相続人を確認する
親が住んでいた家でも、必ず親名義とは限りません。
次のような場合があります。
- 土地と建物で名義が異なる
- 祖父母名義のまま
- 建物が未登記
- 共有名義
- 相続登記が終わっていない
自治体から連絡が来た場合も、名義確認と危険への対応を同時に進めます。
「まだ自分名義ではないから対応しなくてよい」と判断せず、法務局や司法書士へ確認してください。
建物と敷地の状態を確認する
写真を撮る場合は、次の場所を記録します。
- 建物の正面、裏側、両側面
- 屋根と外壁
- 雨どい
- 窓、玄関、勝手口
- 塀、門、物置
- 庭木と雑草
- 道路や隣地との境
- 問題を指摘された箇所
同じ位置から定期的に撮影すると、劣化や草木の変化を比較しやすくなります。
管理費・修繕費を負担する人を決める
相続人が複数いる場合は、誰が当面の費用を支払うかを決めます。
すぐに最終的な分担割合を決められなくても、危険を取り除くための費用を誰が一時的に支払うかは確認しておきましょう。
相続人間で争いがある場合は、契約前に弁護士等へ相談する必要がある場合もあります。
放置を止めた後の選択肢
現地の状態を確認し、危険や近隣への影響に対応した後は、今後の方針を整理します。
| 選択肢 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 管理を続ける | 将来使う可能性がある | 定期管理費と修繕費がかかる |
| 危険箇所を修繕する | 当面所有を続ける | 修繕費を回収できるとは限らない |
| 売却する | 今後使う予定がない | 名義、相続人、家財の確認が必要 |
| 買取を相談する | 古い、早く手放したい | 仲介より価格が低くなる場合がある |
| 解体する | 危険性が高く建物を残さない | 解体費用と土地の管理が残る |

相談現場では、管理を続ける期限が決まらず、費用だけを払い続けているケースもありました。半年後や1年後など、方針を見直す時期も決めておきましょう。
当面は管理を続ける
すぐに売却・解体しない場合は、誰が、どの頻度で、どこを確認するかを決めます。
最低限、次の確認を検討します。
- 建物外観
- 施錠
- 郵便物
- 庭木・雑草
- 雨漏り
- 害虫・害獣
- 不法投棄
- 災害後の破損
遠方で管理できない場合は、空き家管理サービスを利用する方法もあります。

危険箇所を修繕する
今後も所有する場合は、屋根、外壁、雨どい、窓など、雨水の侵入や部材の落下につながる箇所を優先して確認します。
ただし、修繕すれば必ず資産価値が上がるわけではありません。
今後使う予定、修繕費、売却可能性、解体費を比較して判断してください。
売却・買取を検討する
今後使う予定がない場合は、現状のまま売却できるか不動産会社へ相談する方法があります。
古い空き家、家財が残る空き家、通常の仲介が難しい空き家では、買取も選択肢になります。
ただし、査定を依頼すれば必ず売れるわけではありません。物件の状態や立地に応じて、取扱い可能な不動産会社を探す必要があります。
解体を検討する
倒壊や部材飛散の危険が高く、建物を残す予定がない場合は、解体も選択肢になります。
ただし、解体費用、自治体の補助制度、解体後の固定資産税、土地としての売却可能性などを確認してから判断してください。
管理、修繕、売却、買取、解体のどれを選ぶか迷う場合は、次の記事で判断基準を比較しています。

まとめ|認定を恐れる前に、連絡内容と現状を確認する
空き家を放置すると、建物の劣化、庭木や雑草の繁茂、害虫・害獣、不法侵入、不法投棄、近隣トラブルなどにつながることがあります。
適切な管理がされず、そのまま放置すれば周辺へ悪影響を及ぼすおそれがある場合は、管理不全空家として指導・勧告の対象になる可能性があります。
さらに、倒壊や衛生、景観、生活環境への影響が深刻な状態では、特定空家として措置の対象になる場合があります。
ただし、自治体から電話や文書が届いただけで、直ちに管理不全空家や特定空家として認定されたとは限りません。
連絡を受けたら、次の順番で進めましょう。
- 連絡の目的、文書の名称、期限を確認する
- 建物と敷地の状態を確認する
- 道路や近隣への影響を確認する
- 対応を始めたことを自治体へ伝える
- 相続人・共有者の連絡窓口を決める
- 危険や迷惑が生じている箇所から対応する
- 管理、修繕、売却、買取、解体の方針を整理する
行政が相続人間の話し合い、登記、草刈り、修繕、売却、解体をすべて代行するわけではありません。
空き家がある自治体と連絡を取りながら、必要に応じて司法書士、弁護士、不動産会社、管理会社、修繕・解体業者などへ相談先を分けて進めてください。
制度、固定資産税、行政対応は個別事情や自治体の判断によって異なります。具体的な扱いは、空き家がある自治体や税務担当窓口などへ確認してください。

