相続した実家を空き家のままにしていたところ、自治体や近隣住民から「ハチの巣ができている」「道路や隣家の方向へハチが飛んでいる」と連絡を受けることがあります。
空き家が遠方にある場合や、相続人同士で今後の方針が決まっていない場合は、何から対応すればよいのか分からず、戸惑う方もいるでしょう。
自治体や近隣から連絡を受けたら、そのままにせず、まず巣の場所や周辺への危険を確認し、必要に応じて専門の駆除業者へ相談することが大切です。すぐに現地へ行けない場合でも、自治体へ詳しい状況を確認し、親族、空き家管理会社、駆除業者などへ現地確認を依頼する方法があります。業者の手配を始めた段階で、その状況を自治体へ伝えておくと、その後の連絡も進めやすくなります。
この記事で分かること
- 自治体や近隣から連絡を受けた後の対応手順
- 自分で駆除しない方がよいケース
- 駆除業者へ伝える内容と見積もりの確認事項
- 損害賠償や保険の考え方
- 駆除後の再発防止と空き家の処分方針
1. まず危険の確認と手配を始める
自治体や近隣住民から、空き家にハチの巣があると連絡を受けたら、まずは連絡内容を整理します。
この段階で優先するのは、売却や解体の方針を決めることではありません。近隣住民や通行人に危険が及ぶ可能性を確認し、現地確認や駆除業者への相談を始めることが先です。
遠方に住んでいる、仕事ですぐ動けない、相続人同士で話がまとまっていないなど、すぐに現地確認できない事情があっても、連絡をそのままにせず、次の内容を自治体へ確認しましょう。
- 空き家のどこに巣があるのか、おおよその大きさ
- ハチが多く飛んでいる時間帯、隣家・道路・通学路などへの影響
- すでに刺された人がいるか、現地写真があるか
- いつ頃までの対応を求められているか
すぐに駆除日を決められなくても、「現地の状況を確認し、駆除業者への相談を始めます。手配状況が分かり次第、改めて連絡します」と伝えれば、対応を始めていることが分かります。
また、自治体からの連絡が、単なる状況確認なのか、法律や条例に基づく正式な文書なのかも確認しておきましょう。空家等対策の推進に関する特別措置法では、市町村が所有者等に対して情報提供や助言などを行うよう努めることが定められていますが、電話や文書だけでは、勧告・命令・行政代執行などの正式な措置が始まったとは限りません。連絡してきた自治体へ、今回の連絡の位置づけと今後必要な対応を確認してください。

空き家相談の現場では、「まだ何も解決していないから」と、自治体への返信を後回しにしてしまう方もいました。すぐに結論を出せなくても、「確認を始めています」と一言伝えるだけで、その後のやり取りがスムーズになることが多かったです。
2. 自治体や近隣から連絡を受けた後の7つの手順
- 空き家の住所と連絡内容を確認する:対象物件の取り違えがないか、相談が入った日時、所有者側に求められている対応、回答期限を確認します。自治体から文書が届いている場合は、担当部署・担当者名・文書名も控えましょう。
- 巣の場所・大きさ・ハチの飛び方を聞く:軒下、屋根裏、換気口、外壁のすき間、庭木、物置、床下など、分かる範囲で確認します。ただし、ハチの種類を確認するために無理に近づく必要はありません。
- 近隣住宅や道路への危険を確認する:隣家の玄関、通学路、歩道、ごみ集積所などに近い場合は、早めに専門業者へ相談した方がよいでしょう。すでに被害が出ている場合は、自治体へも事実を確認し、必要に応じて弁護士や保険会社へ相談してください。
- 自分で安全に現地確認できるか判断する:スズメバチの可能性がある、巣が高所や屋根裏にある、建物内部に入る必要がある、床や天井が傷んでいるといった場合は、自分で近づかず業者へ現地確認から依頼する方が安全です。
- 遠方なら確認を頼める相手を探す:親族、空き家管理会社、駆除業者などが選択肢です。ただし、依頼するのは道路や敷地外からの写真撮影、鍵の受け渡し、業者の立ち会いなどにとどめ、危険な確認は頼まないようにしましょう。
- 業者手配を始めたことを自治体へ伝える:駆除日が決まっていなくても、「専門業者へ現地確認と見積もりを依頼しています。日程が決まり次第、改めてご連絡します」と伝えれば十分です。
- 駆除後の管理方針まで整理する:定期管理、空き家管理サービス、売却査定、空き家買取、解体費用の確認、家財整理など、駆除後にどれを選ぶかをあらかじめ考えておきます。目の前の危険への対応と、空き家の将来方針は分けて考えて構いません。
3. 所有者・相続人側で確認すること
駆除業者を探すことと並行して、誰が対応する物件なのかを整理します。
登記名義人と相続関係の確認
親が住んでいた実家でも、必ず親名義で登記されているとは限りません。亡くなった親の名義のまま、祖父母などさらに前の世代の名義、土地と建物で名義人が異なる、といったケースもあります。固定資産税の納税通知書が届いている人と登記上の所有者が同じとは限らないため、名義が分からない場合は登記事項証明書や固定資産税関係の資料を確認し、必要に応じて法務局、自治体の税務担当、司法書士、土地家屋調査士へ相談してください。
相続登記が終わっていない状態で自治体から連絡が来ることもありますが、「まだ自分の名義ではないので対応しなくてよい」と考えるのは避けましょう。ハチの巣への対応(現地確認・業者手配・自治体への報告)と、相続登記の手続きは分けて、危険への対応を先に進めるのが基本です。

空き家相談の現場では、「親名義のはずだから大丈夫」と思っていたら、実は祖父母の代の名義のままだった、というケースが少なくありませんでした。急ぎの用件(ハチの巣など)がきっかけで、名義の食い違いに初めて気づく方も多かったです。
連絡窓口と費用負担
相続人や共有者が複数いる場合は、当面の連絡窓口を一人決めましょう。連絡役と費用負担は分けて話し合って構いません。費用負担が決まっていないと見積もりを取っても契約に進めないことがあるため、誰がいったん支払うか、最終的な負担割合、追加費用が出た場合の扱いなどを早めに確認します。相続人間で対立がある場合や、勝手に契約したと主張されるおそれがある場合は、弁護士へ確認してください。
鍵・立ち会い・建物の状況
鍵を誰が持っているか、キーボックスを使えるか、電気・水道が止まっているか、屋内へ入る際に危険な箇所がないかを確認します。床の腐食や天井の落下、家財の散乱などがある場合は、見積もりの段階で必ず業者に伝えてください。
所有者や相続人が分からない場合でも、自治体からの連絡を無視せず、登記名義は法務局、相続登記・相続人調査は司法書士、相続人間の対立は弁護士、というように相談先を分けて進めましょう。
4. 自分でハチに近づいてはいけないケース
次のいずれかに当てはまる場合は、自分で駆除しようとせず、専門業者へ相談してください。
- スズメバチの可能性がある、または種類を判断できない
- 巣が高所・屋根裏・壁内部・床下にある
- 夏以降に大きくなった巣
- 近隣や道路への危険が出ている
- 老朽化した空き家で建物内部への立ち入りが危険
- 遠方で現地確認できない
巣を棒で突く、穴を先にふさぐ、殺虫剤を無計画に噴射する、脚立で近づく、といった行動は避けてください。出入口を先にふさぐと、建物内部に残ったハチが室内側へ出てくる可能性があります。ハチの種類が分からない場合も、無理に確認しようとせず、巣の場所・見た目・飛び方など分かる範囲の情報を業者へ伝えれば十分です。
5. 駆除業者へ相談するときに伝えること
すべての情報がそろっていなくても問題ありません。遠方で現地確認できない場合は、その事情も正直に伝えましょう。
- 空き家の所在地、建物の種類(平屋か2階建て以上か)、巣があると思われる場所
- 地面からのおおよその高さ、巣の大きさ(こぶし・ソフトボール・バレーボールくらい、など感覚的な表現でも可)
- ハチの見た目や飛び方(体の大きさ、色、多数で飛んでいるかなど)
- 鍵を誰が持っているか、立ち会いが可能か
- 自治体や近隣から連絡・苦情が来ていること
- 現地写真の有無、建物の老朽化や立ち入りの危険
6. 見積もり前に確認したい料金と作業範囲
広告や公式サイトの基本料金だけで判断せず、追加料金が発生する条件とどこまでが作業に含まれるかを確認しましょう。
- 現地調査費・出張費・基本料金・高所作業費・屋根裏や床下作業費
- 巣の撤去・処分まで料金に含まれるか
- ハチの種類による追加料金
- 戻りバチ対策、駆除後の保証期間と対象範囲
- 侵入口の穴ふさぎや建物補修まで対応するか(建物修理は別業者になる場合もあります)
- 遠方所有者向けの、作業前後の写真報告・立ち会いなし対応の可否
- 現地で巣が複数見つかった、高所作業車が必要になったなど、追加料金が発生する条件
空き家のハチの巣駆除をWEBで相談する
ハチの種類が分からない、巣が高所や屋根裏にある、近隣への影響が出ている場合は、無理に自分で駆除せず、専門業者へ見積もりを依頼しましょう。遠方の空き家の場合は、現地確認、鍵の受け渡し、立ち会いの要否、作業前後の写真報告についても、WEB申込み時に相談してください。
7. 自治体・近隣への報告
確認や業者手配を始めた段階で状況を共有することが大切です。駆除日が決まっていなくても、「現在、現地確認と駆除業者への見積もり依頼を進めています。作業日が決まり次第、改めてご連絡します」と伝えれば十分です。
駆除予定日が決まったら、特に巣が道路や隣家の玄関付近に近い場合は、自治体へ共有しておくと近隣への案内方法を相談しやすくなります。駆除完了後は、巣があった場所、撤去の有無、再発防止として行ったことなどを整理して報告しましょう。作業前後の写真は、完了報告だけでなく相続人・共有者への説明にも使えます。
近隣へ直接連絡する場合は、責任の有無を争う話から始めず、まず対応状況を簡潔に伝えます。相手が強く不満を訴えている場合や、すでに被害が発生している場合は、感情的なやり取りを避け、自治体・弁護士・保険会社へ相談してください。
自治体、近隣住民、駆除業者とのやり取りは記録しておきましょう。連絡を受けた日時、担当部署・担当者名、現地確認や見積もりを依頼した日、駆除予定日と完了日、見積書・請求書・作業報告書などです。記録があれば必ず責任を免れるわけではありませんが、危険を認識した後にどのような対応をしたかを説明する資料になります。
なお、自治体は相続登記の手続き、相続人同士の話し合い、駆除業者の選定・契約、費用の支払い、近隣との損害賠償交渉までを代行するわけではありません。業者選び・見積もり・契約・支払いは、原則として所有者や相続人側で進めます。
8. 空き家所有者・管理者に求められる管理
空き家は人が住んでいなくても、敷地内のハチが近隣住宅や道路へ飛び、周辺の生活環境へ影響を及ぼすことがあります。空家等対策の推進に関する特別措置法では、所有者または管理者が、周辺の生活環境へ悪影響を及ぼさないよう適切に管理するよう努めることが定められています。
遠方にある、相続登記が終わっていない、相続人同士で話がまとまっていない、といった事情があっても、近隣への危険をそのままにしてよいわけではありません。すぐに空き家全体の方針を決められなくても、自治体から状況を聞く、現地写真を確認する、駆除業者へ見積もりを依頼する、相続人の連絡窓口を決める、といった対応は先に進められます。
相続人や共有者が複数いる場合は、「誰かが対応するだろう」と考えているうちに手配が止まることがあります。自治体との連絡窓口、駆除業者との連絡担当、鍵を管理する人、費用を一時的に支払う人など、最低限の役割を決めておきましょう。
9. 損害賠償責任を問われる可能性はある?
空き家にできたハチの巣を放置し、近隣住民や通行人が刺された場合、所有者や管理者が損害賠償責任を問われる可能性はあります。ただし、ハチの巣があるという事実だけで、直ちに賠償責任が確定するわけではありません。
民法上、故意または過失によって他人へ損害を与えた場合に賠償責任を負うという考え方があるため、危険を認識しながら長期間放置し、被害が生じた場合は責任を問われる可能性が高まります。一方で、自治体から連絡を受けた後すぐに業者へ相談し、駆除日を調整していた場合と、何度も連絡を受けながら何も対応していなかった場合とでは、事情が大きく異なります。
実際の賠償責任の有無は、危険を認識していた時期、自治体や近隣からの連絡内容、所有者が行った対応、被害を与えたハチが実際にその空き家の巣から飛んだと確認できるかなど、個別事情によって判断されます。近隣住民や通行人から治療費や休業損害を請求された場合は、自分だけで責任の有無や金額を判断せず、対応の記録を整理したうえで、弁護士や加入している保険会社へ確認してください。
火災保険や個人賠償責任特約などで補償を受けられる可能性もありますが、ハチによる被害が対象になるかは保険の種類や契約条件によって異なるため、保険証券を確認し、保険会社へ問い合わせましょう。

空き家相談の現場では、「連絡が来ただけで訴えられるのでは」と、必要以上に不安になってしまう方もいました。ですが、多くの場合はまず状況確認や改善のお願いの段階です。過度に心配するより、対応を始めたことを伝える方が、その後の関係もスムーズに進みやすいです。
10. ハチに刺された場合の対応
現地確認中や駆除作業の前後に、所有者・親族・近隣住民・通行人などがハチに刺されることがあります。刺された部分の痛みや腫れだけで済む場合もあれば、全身にアレルギー症状が出る場合もあります。
次の症状がある場合は、様子を見続けず119番へ連絡してください。
- 呼吸困難、喉が締めつけられる感じ、声が出しにくい
- 顔・唇・舌・喉の腫れ、全身に広がるじんましん
- 強い吐き気、めまい、意識がもうろうとする、ぐったりした状態
このような症状がある場合は、空き家の確認や駆除業者への連絡より、救急要請を優先してください。刺された直後は軽症に見えても、その後に症状が強くなることがあるため、過去に強い症状が出たことがある、短時間に複数箇所を刺された、といった場合も早めに医療機関や救急相談窓口へ確認しましょう。医療機関を受診すべきかどうかや治療方法の判断は、この記事だけで行わず、必ず医療機関・救急相談窓口へ確認してください。過去にアドレナリン自己注射薬(エピペン等)を処方されている場合は、医師の指示に従ってください。
被害が発生した場合は、本人の安全確保と医療対応を最優先にしたうえで、発生日時・場所・自治体や近隣から聞いた内容・駆除業者へ相談した日時などを記録しておきましょう。治療内容や個人情報は本人の同意なく周囲へ広めないよう注意し、治療費などを請求された場合はその場で責任や賠償額を断定せず、弁護士や保険会社へ確認してください。
11. 駆除後、再び巣を作られないために
ハチの巣を駆除しても、管理が止まったままでは別の場所に再び巣を作られる可能性があります。高所や屋根裏など危険な場所へ自分で上る必要はありませんが、地上から確認できる範囲、または業者からの写真報告で、次の場所を点検しましょう。
- 軒下・屋根裏・換気口:古い巣の跡、軒天の穴、換気口カバーの外れなど
- 雨どい・外壁・窓・戸袋:ひび割れ、配管まわりのすき間、雨戸や戸袋の内部
- 物置・庭木・生け垣:庭木の枝の内側、生け垣の奥、放置された段ボールや資材
- 放置車両・農機具・家財:ボンネット内部、カバー内部、屋外に置いた家具など
家財が多く建物内を安全に確認できない場合は、無理に動かさず駆除業者や片付け業者へ状況を伝えましょう。ハチが残っている状態で家財を動かすと刺激する可能性があります。
駆除業者へは、巣ができた原因、主な出入口、再発の可能性、穴ふさぎや建物補修の要否も確認しておくと、今後の点検がしやすくなります。今後も所有する場合は、定期的な見回りを続けるか、遠方で管理できない場合は空き家管理サービスの利用も検討しましょう。ただし、管理サービスがハチの巣を直接駆除するとは限らないため、発見時に業者手配まで相談できるかを契約前に確認してください。
12. 駆除後、空き家を今後どうするか決める
ハチの巣への対応と、空き家全体の処分方針は分けて考えて構いません。まず危険を解消し、その後に相続人・共有者で今後の方針を話し合いましょう。
| 状況 | 検討する選択肢 |
|---|---|
| 今後も使う予定がある | 定期管理と建物点検 |
| 遠方で管理できない | 空き家管理サービス |
| 今後使わない | 売却査定 |
| 古くて通常売却が難しい | 空き家買取 |
| 老朽化や倒壊の危険がある | 売却と解体を比較 |
| 家財が多い | 片付け・遺品整理 |
| 名義が整理されていない | 法務局や司法書士へ相談 |
ハチの巣以外にも、草木の繁茂や建物の劣化など、空き家を放置することで起こりやすいリスクがあります。

空き家相談の現場では、ハチの巣のような目の前の問題をきっかけに、止まっていた名義や管理の話し合いが動き出すことがよくありました。危険への対応と、空き家の将来方針は、焦って同時に決めなくても大丈夫です。
まとめ|まず危険への対応を始め、その後に空き家の方針を決める
空き家にハチの巣ができ、自治体や近隣住民から連絡を受けた場合は、そのままにせず、まず状況確認と相談先の手配を始めることが大切です。すぐに現地へ行けない場合でも、自治体から巣の場所や近隣への影響を聞き、必要に応じて駆除業者、親族、空き家管理会社などへ確認を依頼できます。
基本的な流れ
- 空き家の住所と連絡内容を確認する
- 巣の場所・大きさ・ハチの飛び方を聞く
- 近隣住宅や道路への危険を確認する
- 自分で安全に現地確認できるか判断する
- 必要に応じて専門業者へWEB見積もりを依頼する
- 自治体へ対応状況と駆除予定を伝える
- 駆除後に再発防止と空き家の方針を整理する
ハチの巣を認識しながら放置し、被害が生じた場合は損害賠償責任を問われる可能性がありますが、責任の有無は個別事情によって異なります。ハチに刺された場合は、空き家の管理や責任の話よりも、まず被害を受けた人の安全と医療対応を優先してください。
駆除が終わった後は、同じ問題を繰り返さないよう建物・敷地全体を点検し、今後も管理を続けるのか、売却するのか、買取や解体を検討するのかを、相続人・共有者で話し合いましょう。

