相続した実家が空き家になり、売却や買取を考えたときに気になるのが「相続登記」や「名義変更」です。
「親名義のままでも売れるのか」
「固定資産税の通知書が自分に届いていれば大丈夫なのか」
「相続登記をしていないと売却査定もできないのか」
「祖父母名義のままだったらどうなるのか」
「建物が未登記だった場合はどうすればよいのか」
「相続人が複数いる場合、誰の同意が必要なのか」
このような不安を持つ人は少なくありません。
結論から言うと、相続した空き家を実際に売却するには、登記名義を整理する必要があります。
親名義や祖父母名義のままでは、買主へ所有権を移す手続きができず、売却が途中で止まってしまう場合があります。
また、古い実家では、建物が未登記になっていることもあります。
ただし、相続登記が終わっていない段階でも、不動産会社に「売れる可能性があるか」「どのくらいの価格になりそうか」を相談できる場合はあります。
大切なのは、いきなり売却を進めるのではなく、まず土地と建物の名義を確認することです。
この記事では、相続登記をしないと空き家は売れないのか、名義変更の基本、未登記建物の注意点、売却前に確認すること、司法書士や行政書士に相談した方がよいケースをわかりやすく整理します。
なお、相続登記、名義変更、相続人の確認、税金、不動産売却に関する内容は、個別事情によって変わることがあります。実際に手続きを進める場合は、法務局、司法書士、行政書士、土地家屋調査士、税理士、不動産会社などに確認してください。
相続登記をしないと空き家は売れない?
相続した空き家を売る場合、最終的には相続登記が必要になるのが一般的です。
相続登記とは、不動産の名義を、亡くなった人から相続人へ変更する手続きです。
不動産の売却では、登記上の所有者から買主へ所有権を移す必要があります。
そのため、登記名義が亡くなった親や祖父母のままだと、そのまま買主へ名義を移せない場合があります。
売却するには登記名義の整理が必要になる
不動産会社に売却相談をする段階では、相続登記が完了していなくても査定できる場合があります。
しかし、実際に売買契約や引き渡しへ進むには、名義関係を整理する必要があります。
たとえば、親が亡くなり、実家を子どもが相続した場合でも、登記上の所有者が親のままでは、子どもが自由に売却できるとは限りません。
売却を考えるなら、早めに登記事項証明書を確認し、誰の名義になっているのかを把握しましょう。
固定資産税の通知書だけでは所有者確認にならない
固定資産税の納税通知書が自分に届いていると、「自分が所有者になっている」と思う人もいます。
しかし、固定資産税の通知書の送付先と、登記上の所有者は必ずしも同じではありません。
固定資産税の通知書は、空き家の情報を整理するうえで大切な資料です。
ただし、売却や相続登記を考える場合は、土地と建物の登記事項証明書で所有者を確認することが重要です。
査定相談は相続登記前でもできる場合がある
相続登記が終わっていないと、不動産会社に相談してはいけないわけではありません。
「この空き家は売れそうか」
「建物付きで売るべきか」
「空き家買取の対象になりそうか」
「解体して土地として売るべきか」
といった相談は、相続登記前でもできる場合があります。
ただし、実際に売却を進める段階では、名義変更や相続人の同意が必要になることがあります。
査定相談と、売却手続きは分けて考えるとわかりやすいです。
そもそも相続登記とは?
相続登記とは、不動産を相続したときに、登記簿上の所有者を亡くなった人から相続人へ変更する手続きです。
一般的には「名義変更」と言われることもありますが、不動産の場合は「相続登記」と考えるとわかりやすいです。
不動産の名義を相続人へ変える手続き
不動産には、土地や建物ごとに登記情報があります。
登記情報には、所在地、地番、家屋番号、面積、所有者、抵当権などが記録されています。
相続登記をすると、亡くなった人の名義から、相続人の名義へ変更されます。
売却、買取、解体、担保設定などを考える場合、登記名義が整理されていることが大切です。
土地と建物は別々に確認する
実家の名義確認で注意したいのは、土地と建物は別々に登記されているという点です。
土地は親名義、建物は祖父母名義という場合もあります。
また、土地だけ共有名義になっていたり、建物が未登記だったり、増築部分だけ登記されていなかったりする場合もあります。
「実家は親のもの」と思っていても、登記を見ると違うことがあります。
売却や買取を考えるなら、土地と建物の両方を確認しましょう。
建物が未登記になっている場合もある
古い実家では、建物が未登記になっている場合もあります。
未登記建物とは、建物は存在しているものの、法務局の登記簿に建物として登録されていない状態のことです。
たとえば、土地の登記事項証明書は取得できるのに、建物の登記事項証明書が見つからない場合があります。
また、固定資産税の通知書には家屋として記載されているのに、法務局では建物登記が見つからないこともあります。
ここで注意したいのは、固定資産税が課税されていることと、法務局で建物が登記されていることは別の話だという点です。
未登記建物の場合、通常の相続登記の前提となる建物の登記情報がないため、売却や買取を進める際に確認が必要になります。
売却する場合、買主や不動産会社、金融機関から、建物の登記を求められることがあります。
その場合は、建物の表題登記や所有権に関する登記が必要になる場合があります。
建物の表題登記など、不動産の表示に関する登記は土地家屋調査士、所有権に関する登記は司法書士が関わる分野です。
未登記建物かもしれないと思ったら、自分だけで判断せず、法務局、土地家屋調査士、司法書士、不動産会社に確認しましょう。
未登記建物では、固定資産税が課税されていても法務局に建物の登記がない場合があります。土地だけ親名義で建物が未登記の場合や、親が借りていた土地に建物がある場合は、通常の相続登記とは確認手順が異なります。

親名義ではなく祖父母名義のままのこともある
空き家相談でよくあるのが、親名義だと思っていた実家が、実は祖父母名義のままだったというケースです。
この場合、親の相続だけでなく、祖父母の相続関係まで確認が必要になることがあります。
相続人が増え、必要な書類や同意も増える場合があります。
時間が経つほど、相続人が増えたり、連絡先がわからなくなったりすることがあります。
早めに確認しておくことが大切です。
相続登記の義務化で何が変わった?
相続登記は、2024年4月1日に義務化されるまでは、申請が任意とされていました。
しかし、所有者が亡くなっても登記が変更されないまま放置されることで、所有者不明土地が増え、社会問題になっていました。
そのため、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。
2024年4月1日から相続登記が義務化
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。
不動産を相続で取得したことを知った人は、原則として一定期間内に相続登記を申請する必要があります。
この義務化は、2024年4月1日より前に発生した相続で、まだ相続登記をしていない不動産にも関係します。
「昔の相続だから関係ない」とは言い切れないため、未登記の空き家や名義が古いままの不動産がある場合は確認が必要です。
原則3年以内の申請が必要
相続登記は、不動産を相続で取得したことを知った日から、原則3年以内に申請が必要です。
また、2024年4月1日より前に発生した相続で、まだ相続登記をしていない不動産も義務化の対象です。
この場合は、原則として2024年4月1日から3年以内、つまり2027年3月31日までに申請が必要とされています。
ただし、相続した不動産の所有権を取得したことを知った時期や、遺産分割協議の成立時期などによって考え方が変わる場合があります。
正当な理由がないのに申請しない場合、過料の対象になる可能性もあります。
不安な場合は、法務局や司法書士に確認しましょう。
期限内に難しい場合は相続人申告登記という制度もある
相続登記を期限内に行うことが難しい場合、「相続人申告登記」という制度があります。
これは、相続登記の申請義務を簡易に履行するための制度です。
ただし、相続人申告登記をしただけで、空き家を売却できる状態になるわけではありません。
不動産の権利関係を整理して売却するには、別途、相続登記が必要になる場合があります。
そのため、相続人申告登記は「売却の準備がすべて終わる制度」ではなく、「期限内に相続登記が難しい場合の制度」と考えた方がよいです。
空き家を売る前に確認すること
相続した空き家を売る前に、まず確認するべきことがあります。
登記事項証明書を取得する
最初に確認したいのは、登記事項証明書です。
登記事項証明書を見れば、土地や建物の登記名義、所在地、地番、家屋番号、抵当権などを確認できます。
取得方法は、法務局の窓口、郵送、オンライン請求などがあります。
実家が遠方にある場合でも、オンライン請求を利用すれば確認しやすい場合があります。
まずは、土地と建物の両方について登記事項証明書を取得しましょう。
もし建物の登記事項証明書が見つからない場合は、未登記建物の可能性もあります。
相続人を確認する
次に、相続人を確認します。
相続人が一人だけであれば比較的進めやすいですが、兄弟姉妹など複数の相続人がいる場合は、売却について話し合いが必要になります。
相続人が多い場合や、連絡が取れない人がいる場合は、手続きに時間がかかることがあります。
売却や買取の相談をする前に、誰が相続人なのかを整理しておきましょう。
相続人が複数いて共有名義になる場合は、後から売却や解体を決めるときに意思確認が必要になることがあります。詳しくは「共有名義の空き家は売却・解体できる?相続持分と同意が必要な手続き」で整理しています。
遺言書や遺産分割協議を確認する
遺言書がある場合は、その内容によって不動産を誰が取得するかが変わることがあります。
遺言書らしきものを見つけた場合は、自己判断で開封したり処分したりせず、専門家や家庭裁判所などに確認しましょう。
遺言書がない場合や、相続人同士で分け方を決める場合は、遺産分割協議が必要になることがあります。
遺産分割協議がまとまっていないと、売却の話が進みにくくなります。
相続人全員の同意が必要になる場合がある
相続人が複数いる場合、空き家の売却には相続人全員の同意が必要になることがあります。
一人が実家を管理していたとしても、その人だけで売却できるとは限りません。
売却価格、片付け費用、解体費用、税金、売却後のお金の分け方などで意見が分かれることもあります。
早めに話し合いを始め、必要に応じて専門家に相談しましょう。
相続登記が未了だと売却で困るケース
相続登記が未了のままだと、空き家の売却や買取で困ることがあります。
祖父母名義のまま相続人が増えている
実家が祖父母名義のままの場合、祖父母の相続から整理する必要が出ることがあります。
親の兄弟姉妹、いとこ、さらにその相続人まで関係してくる場合もあります。
時間が経つほど相続関係が複雑になります。
売却を考えたときに初めて名義を確認すると、思った以上に時間がかかることがあります。
相続人の一部と連絡が取れない
相続人の中に連絡が取れない人がいる場合、売却の手続きが進みにくくなります。
住所がわからない、疎遠になっている、海外にいる、相続人が亡くなっているなど、さまざまなケースがあります。
このような場合は、自分たちだけで解決しようとせず、司法書士や弁護士などに相談が必要になることがあります。
土地と建物の名義が違う
土地と建物の名義が違う場合も注意が必要です。
たとえば、土地は父名義、建物は祖父名義という場合です。
この状態で売却しようとすると、それぞれの名義について相続関係を確認する必要があります。
売却査定を取る前に、土地と建物の名義を分けて確認しましょう。
建物が未登記で売却前に確認が必要になる
古い空き家では、建物が未登記のまま残っていることがあります。
この場合、建物の登記事項証明書を取得しようとしても見つからないことがあります。
未登記建物のままでも相談自体はできる場合がありますが、売却や買取を進めるときに、建物の権利関係や所有者をどう確認するかが問題になることがあります。
買主が住宅ローンを利用する場合や、建物付きで売却する場合は、登記の整理を求められることもあります。
また、建物を解体して土地として売る場合でも、解体前の所有者確認や相続人の同意が問題になることがあります。
建物が未登記かもしれない場合は、売却査定や買取査定と並行して、土地家屋調査士や司法書士、不動産会社へ確認しましょう。
売却や買取の話が途中で止まる
不動産会社や買取業者に相談して査定額が出ても、名義が整理できていなければ、契約や引き渡しに進めない場合があります。
特に、買主が見つかった後に相続登記や未登記建物の問題が出ると、売却のチャンスを逃すこともあります。
売却や買取を考えるなら、早めに名義関係を確認しておくことが大切です。
司法書士・行政書士・土地家屋調査士に相談した方がよいケース
相続登記や名義変更は、自分で進められる場合もあります。
しかし、空き家の相続では、専門家に相談した方がよいケースも多いです。
司法書士に相談するケース
司法書士は、不動産の権利に関する登記の専門家です。
次のような場合は、司法書士に相談すると進めやすくなります。
- 相続登記をしたい
- 登記名義が誰かわからない
- 祖父母名義のままになっている
- 相続人が複数いる
- 遺産分割協議書が必要
- 売却予定がある
- 不動産会社から相続登記を求められた
売却や買取を考えている場合は、早めに司法書士へ相談することで、売却までの流れを整理しやすくなります。
行政書士に相談するケース
行政書士は、相続関係書類や遺産分割協議書の作成などで相談できる場合があります。
ただし、不動産登記の申請代理は司法書士の業務です。
そのため、行政書士に相談する場合でも、登記が必要な場面では司法書士と連携する形になることがあります。
相談内容によって、司法書士、行政書士、税理士、不動産会社を分けて考えましょう。
土地家屋調査士に相談するケース
土地家屋調査士は、建物の表題登記や土地の境界、分筆など、不動産の表示に関する登記に関わる専門家です。
次のような場合は、土地家屋調査士に確認が必要になることがあります。
- 建物が未登記かもしれない
- 建物の登記事項証明書が見つからない
- 増築部分が未登記かもしれない
- 建物を取り壊したのに登記が残っている
- 土地の境界や面積に不安がある
未登記建物の場合、相続登記だけでなく、建物の表題登記などが関係する場合があります。
司法書士と土地家屋調査士のどちらに相談すべきかわからない場合は、まず法務局や不動産会社に状況を伝えて、必要な確認先を整理しましょう。
不動産会社に相談するケース
不動産会社は、空き家が売れるかどうか、いくらくらいで売れそうか、仲介売却か買取か、解体して土地売却がよいかなどを相談する相手です。
ただし、不動産会社は登記手続きの専門家ではありません。
名義変更、相続登記、未登記建物の確認は、必要に応じて司法書士や土地家屋調査士へ確認しましょう。
山奥の土地や売れにくい空き家を引き取る業者に注意
相続登記を済ませたとしても、すべての空き家や土地がすぐに売れるわけではありません。
特に、山林、山奥の土地、再建築が難しい土地、道路に問題がある土地、老朽化が進んだ空き家などは、買い手が見つかりにくいことがあります。
相続登記をしてもすぐ売れるとは限らない
相続登記は、売却や買取に進むための大切な準備です。
ただし、相続登記をしたからといって、必ず売れるわけではありません。
立地、道路条件、建物状態、需要、管理状況によっては、売却が難しい場合もあります。
売却なのか引き取りなのかを確認する
「どんな土地でも引き取ります」
「山奥の空き家でも対応します」
「価値がない土地でも相談できます」
このような広告を見た場合は、売却なのか、引き取りなのかを確認しましょう。
売却であれば、売主がお金を受け取るのが基本です。
一方で、引き取りや処分代行に近い話の場合、手数料、管理費、処分費用などの名目で、売主側がお金を支払う条件になることがあります。
すべてが悪質とは限りませんが、契約内容や費用負担は慎重に確認してください。
費用負担がある場合は慎重に判断する
「無料で引き取る」「1円で買い取る」と言われた場合でも、別途費用がかかる場合があります。
たとえば、登記費用、測量費、残置物処分費、管理費、解体費用、コンサル料などです。
特に、売却価格よりも費用負担の方が大きくなる場合は注意が必要です。
不安な場合は、その場で契約せず、自治体の空き家相談窓口、消費生活センター、司法書士、不動産会社などに確認しましょう。
このテーマについては、別記事で「田舎の空き家や山林でも買い取る業者は怪しい?引き取り詐欺と正当な買取の見分け方」として詳しく整理する予定です。
相続登記から空き家売却までの流れ
相続した空き家を売却する場合は、次の流れで進めると整理しやすいです。
- 固定資産税の通知書や古い権利証を確認する
- 土地と建物の登記事項証明書を取得する
- 建物が未登記ではないか確認する
- 登記名義人を確認する
- 相続人を確認する
- 遺言書や遺産分割協議の有無を確認する
- 必要に応じて司法書士や土地家屋調査士へ相談する
- 相続登記や必要な登記手続きを進める
- 家財や重要書類を確認する
- 不動産会社に売却査定を依頼する
- 仲介売却・空き家買取・解体して土地売却を比較する
売却を急ぐ場合でも、名義確認を飛ばして進めると、後で手続きが止まることがあります。
まずは、誰の名義になっているのか、建物が登記されているのかを確認しましょう。
相続した空き家を売る流れを確認したい場合は、こちらの記事も参考にしてください。

まとめ|空き家を売る前に、まず名義を確認しよう
相続登記をしないと、相続した空き家の売却が途中で止まってしまう場合があります。
親名義や祖父母名義のままでは、買主へ所有権を移す手続きに進めないことがあります。
また、土地と建物の名義が違う場合、建物が未登記の場合、相続人が複数いる場合は、想定より時間がかかることがあります。
古い実家では、固定資産税の通知書に家屋が記載されていても、法務局の登記簿に建物があるとは限りません。
空き家を売る前に、まず土地と建物の登記事項証明書を確認しましょう。
固定資産税の通知書が届いているだけでは、登記上の所有者確認としては不十分です。
相続登記は義務化されています。
不安がある場合は、法務局や司法書士に相談し、早めに名義関係を整理しておくことが大切です。
相続した空き家の名義で不安があるなら
まずは、土地と建物の登記事項証明書を確認しましょう。
親名義、祖父母名義、共有名義、未登記建物など、状況によって必要な手続きは変わります。
相続登記や名義変更に不安がある場合は、司法書士や行政書士などに相談すると、売却までの流れを整理しやすくなります。
建物が未登記かもしれない場合は、土地家屋調査士への確認が必要になることもあります。
売却や買取を考えている場合は、相続登記の確認と並行して、空き家売却査定や空き家買取の相談も進めると、実家をどうするか判断しやすくなります。

