実家が空き家になったとき、「親が住んでいた家だから、当然親の名義だろう」と思ってしまうことがあります。
しかし、売却、解体、相続登記などを進める前に確認したいのは、家族の記憶ではなく、土地と建物の登記上の名義と権利関係です。
最初に、土地と建物それぞれの登記事項証明書を確認しましょう。
特に確認したいのは、次の3点です。
・土地と建物の両方が登記されているか
・土地と建物の所有者・共有者は誰か
・抵当権など所有権以外の権利が残っていないか
名義を確認すると、「誰と話し合う必要があるのか」「相続登記が必要なのか」「売却や解体を進められる状態なのか」を整理しやすくなります。
この記事で分かること
- 実家の土地と建物の名義を確認する方法
- 登記事項証明書の取得方法
- 住所と地番が違う場合の確認方法
- 表題部・甲区・乙区で見るポイント
- 未登記建物、共有名義、抵当権がある場合の考え方
- 亡くなった親がほかに不動産を持っていた可能性がある場合の確認方法
- 名義確認後に相続登記、売却、解体へ進む順番

売却や解体の相談を始める前に、まず土地と建物の名義を確認してください。最初にここを整理すると、「誰と話し合う必要があるのか」「どの専門家へ相談すればよいのか」が見えやすくなります。
実家の空き家の名義確認は登記簿の取得から始める
実家の空き家について最初に確認したいのは、「誰が住んでいたか」ではなく、土地と建物が誰の名義で登記されているかです。
売却や解体を検討していても、所有者や相続人が分からなければ、具体的な契約や手続きを進めにくくなります。
相談現場では、次のような思い込みがありました。
・親が住んでいたので、土地も建物も親名義だと思っていた
・親が固定資産税を払っていたので、親が所有者だと思っていた
・祖父から親へ相続済みだと聞いていた
・兄弟だけで話し合えばよいと思っていた
・住宅ローンを完済したので、抵当権も自動的に消えていると思っていた
家族の説明や固定資産税の納税状況は、確認の手掛かりにはなります。
ただし、それだけで現在の登記名義や権利関係を判断しないことが大切です。
土地と建物は別々に確認する
土地と建物は、登記上は別の不動産です。
そのため、土地の登記事項証明書だけを取得しても、建物の名義や登記の有無までは確認できません。
実家の空き家では、次のような組み合わせもあります。
・土地も建物も親名義
・土地は親名義、建物は祖父母名義
・土地と建物の所有者が別人
・土地は登記されているが、建物は未登記
・親が借りていた土地の上に建物がある
土地と建物の登記事項証明書をそれぞれ確認し、名義が一致しているかを見ましょう。
固定資産税の通知書だけでは登記名義を判断できない
固定資産税の納税通知書や課税明細書に建物が記載されていても、法務局で建物が登記されているとは限りません。
未登記建物でも、自治体が建物を把握して固定資産税を課税している場合があります。
また、納税通知書を受け取っている人と、登記上の所有者が同じとは限りません。
固定資産税の課税情報は自治体、登記情報は法務局で確認するものとして、分けて考えましょう。

「固定資産税の通知が自分に来ているから、自分が所有者」とは限りません。売却や解体を決める前に、登記上の所有者を確認してください。
土地と建物の登記事項証明書を取得する方法
登記事項証明書は、一般に「登記簿」や「登記簿謄本」と呼ばれることがあります。
この記事では、読みやすさを優先して「登記簿」と表記します。
土地・建物の登記事項証明書は、主に次の方法で請求できます。
・法務局や登記所の窓口で請求する
・郵送で請求する
・オンラインで請求する
請求方法、手数料、利用時間などは変更される可能性があるため、申請前に法務局の最新情報を確認してください。
住所と地番は同じとは限らない
登記事項証明書を請求するときは、土地の地番や建物の家屋番号を特定する必要があります。
普段使っている住所と、登記上の地番・家屋番号は同じとは限りません。
地番や家屋番号が分からない場合は、次の資料が手掛かりになります。
・固定資産税の納税通知書・課税明細書
・権利証・登記済証
・登記識別情報通知
・売買契約書
・過去に取得した登記事項証明書
それでも分からない場合は、空き家の所在地を管轄する法務局へ相談してください。
内容確認だけなら登記情報提供サービスもある
インターネット上の「登記情報提供サービス」を利用して、登記内容を確認する方法もあります。
ただし、登記情報提供サービスで取得する情報は、登記事項証明書そのものではありません。
行政機関や専門家などから正式な登記事項証明書の提出を求められている場合は、必要な書類を確認してください。
親が所有していた不動産の場所自体が分からない場合
ここまでの方法は、基本的に「実家の場所は分かっていて、その土地や建物の名義を調べたい」という場合に使います。
一方、
「亡くなった親が実家以外にも土地を持っていたと聞いたことがある」
「山林や農地を持っていたらしいが場所が分からない」
「親名義の不動産をすべて把握できているか不安」
というケースもあります。
このように、不動産の所在地自体が分からない場合の確認方法の一つとして、2026年2月2日に始まった「所有不動産記録証明制度」があります。
この制度では、一定の条件のもとで、本人や亡くなった人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的に確認できます。
相続登記が必要な不動産の把握漏れを防ぐために設けられた制度です。
ただし、この制度の利用条件や請求方法、必要書類などは個別に確認する必要があります。
「親がほかにも不動産を持っていた可能性があるが、場所が分からない」という場合は、法務局へ相談し、所有不動産記録証明制度を利用できるか確認してください。
確認した不動産が亡くなった親などの名義であれば、次に相続登記が必要かを確認します。
法務省「所有不動産記録証明制度について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
登記簿は表題部・甲区・乙区の順に確認する
登記簿には多くの情報が記載されていますが、最初からすべてを理解する必要はありません。
まずは、次の3つの部分を確認します。
| 確認する部分 | 主な記載内容 | 空き家で確認したいこと |
|---|---|---|
| 表題部 | 土地・建物の所在、地番、家屋番号、種類、構造、面積など | 対象の土地・建物に間違いがないか |
| 権利部・甲区 | 所有者、共有者、持分、所有権移転の原因など | 現在の名義人は誰か、共有名義か |
| 権利部・乙区 | 抵当権、根抵当権、地上権、地役権など | 売却などに影響する権利が残っていないか |
差押えや仮登記などが記載されている場合や、記載内容の意味が分からない場合は、自分だけで判断せず、司法書士や弁護士などへ確認してください。
登記簿で最初に確認する3つのこと
1.土地と建物の両方が登記されているか
最初に、土地だけでなく、建物の登記も存在するか確認します。
土地の登記簿は取得できたものの、建物の登記が見つからない場合は、建物が未登記である可能性があります。
ただし、所在地や家屋番号の調べ方が違っている可能性もあるため、見つからないだけで未登記と断定しないでください。
法務局で確認しても建物の登記が見つからない場合は、自治体の固定資産税担当部署で、課税台帳に建物が登録されているかなども確認します。
建物の登記が見つからない場合は、未登記建物の所有者確認や売却・解体時の注意点を次の記事で確認してください。

2.土地と建物の所有者・共有者は誰か
次に、権利部の甲区で土地と建物の所有者を確認します。
「親の実家だから親名義」とは限りません。
登記簿を確認すると、
・亡くなった親の名義
・祖父母やさらに前の世代の名義
・親以外の親族名義
・土地と建物で名義人が異なる
・複数人の共有名義
となっている場合があります。
共有名義の場合は、共有者の氏名だけでなく、それぞれの持分割合も確認します。
登記上の所有者が亡くなっている場合は、戸籍などを使って現在の相続人を確認する必要があります。
登記簿に記載された故人の名前だけでは、現在話し合うべき相続人全員を把握できない場合があります。
亡くなった親や祖父母の名義だった場合は、相続登記が必要かを確認してください。詳しい期限や手続きは、後半の「相続登記が終わっていない場合」で整理します。
共有者が記載されていた場合は、空き家全体の売却や解体を一人で決められるとは限りません。
共有名義の空き家を売却・解体するときの考え方は、次の記事で確認できます。


名義確認で大切なのは、「自分が相続人だから自分だけで決められる」と思い込まないことです。共有者やほかの相続人がいる場合は、早い段階で誰と話し合う必要があるか整理してください。
3.抵当権など所有権以外の権利が残っていないか
権利部の乙区では、抵当権、根抵当権、地上権、地役権など、所有権以外の権利を確認します。
住宅ローンなどを完済していても、抵当権抹消登記が行われていなければ、登記簿に抵当権が残っている場合があります。
抵当権が記載されていた場合は、
・借入金は完済しているか
・金融機関から抹消書類を受け取っているか
・抵当権抹消登記が終わっているか
・現在も金融機関へ連絡できるか
を確認してください。
分からない場合は、記載されている金融機関や司法書士へ相談しましょう。
登記簿を確認した結果ごとの次の行動
登記簿を確認したら、結果に合った次の手続きへ進みます。
| 確認できた状態 | 次に行うこと | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 建物の登記が見つからない | 課税情報と建物の所有者を確認する | 自治体、法務局、土地家屋調査士、司法書士 |
| 亡くなった親・祖父母名義 | 相続人を確認し、相続登記を検討する | 司法書士、法務局 |
| 複数人の共有名義 | 共有者と持分を確認し、今後の方針を話し合う | 司法書士、弁護士 |
| 土地と建物の所有者が異なる | それぞれの所有者と相続人を確認する | 司法書士、弁護士 |
| 抵当権が記載されている | 借入れと抹消手続きの状況を確認する | 金融機関、司法書士 |
| 権利関係に大きな問題がない | 売却、管理、活用、解体を比較する | 不動産会社、自治体、解体業者など |
登記上の住所や氏名が古い場合
登記上の所有者は合っていても、住所や氏名が現在の情報と違っている場合があります。
2026年4月1日から、所有者の住所や氏名等の変更登記が義務化されています。
期限や経過措置、具体的な手続きは、法務局または司法書士へ確認してください。
相続登記が終わっていない場合
相続登記は2024年4月1日から義務化されています。
登記簿を確認して、亡くなった親や祖父母の名義のままになっている場合は、相続登記が必要か確認してください。
相続人が多い、戸籍の収集が難しい、遺産分割がまとまっていないなどの場合は、早めに司法書士へ相談しましょう。
詳細な期限や必要書類は、相続登記の記事で確認してください。

相続手続きを自分だけで進めるのが難しい場合
登記簿を確認して親や祖父母名義のままになっていた場合、相続人の確認や戸籍収集、相続登記など、次に必要な手続きを整理する必要があります。
「何から手をつければよいか分からない」
「必要な戸籍を自分ですべて集めるのが難しい」
「相続登記まで含めて専門家へ相談したい」
という場合は、相続手続きの相談サービスを利用する方法もあります。
nocosでは、相続に関する手続きについて相談できます。
この記事で想定しているのは、親や祖父母が亡くなった後の相続手続きや名義整理について相談したいケースです。
生前相談や相続放棄など、相談内容によっては広告の成果対象外となる場合があります。実際に対応できる内容や費用については、申込み前にサービス側で確認してください。
【日本全国No.1】相続手続きの「nocos-ノコス」専門家へ相談する前に準備したい書類
相談時には、次の資料があると現在の状況を説明しやすくなります。
・土地と建物の登記事項証明書
・固定資産税の納税通知書・課税明細書
・権利証・登記済証・登記識別情報通知
・売買契約書、贈与契約書、借地契約書
・亡くなった所有者と相続人の関係が分かる資料
・遺言書や遺産分割協議書
・住宅ローンや抵当権に関する書類
・土地・建物の図面や建築関係書類
すべてそろっていなくても、相談を始めることはできます。
まず手元にある資料を整理し、足りないものを相談先と確認しましょう。
名義を確認した後に売却・解体を検討する
登記簿を確認し、所有者、相続人、共有者、抵当権などを整理した後で、売却、管理、活用、解体を比較します。
名義を確認しただけで、空き家の方針が自動的に決まるわけではありません。
建物の状態、立地、家財、維持費、固定資産税、相続人の意向、今後も管理できるかなども確認します。
売却する方向で進める場合は、名義確認から相続登記、査定、契約までの流れを次の記事で整理しています。

売るか解体するか迷っている場合はこちらです。


登記簿を取ること自体が目的ではありません。名義や権利関係を確認したら、相続登記が必要かを確認し、売る・管理する・解体するなど、空き家を今後どうするかの判断へ進むことが大切です。
まとめ|土地と建物の名義を確認して次の手続きへ進む
実家の空き家の名義が分からない場合は、まず土地と建物それぞれの登記事項証明書を確認します。
最初に見るのは、次の3点です。
- 土地と建物の両方が登記されているか
- 土地と建物の所有者・共有者は誰か
- 抵当権など所有権以外の権利が残っていないか
また、亡くなった親が実家以外にも不動産を所有していた可能性があり、所在地自体が分からない場合には、所有不動産記録証明制度という確認方法もあります。
名義確認の結果、
・建物が未登記
・親や祖父母名義のまま
・複数人の共有名義
・抵当権が残っている
などの状態が分かったら、それぞれ必要な手続きへ進みます。
親や祖父母の名義のままで、自分だけでは相続手続きを進めにくい場合は、司法書士などの専門家や相続手続きサービスへの相談も選択肢です。
すぐに売却や解体を決めるのではなく、まず「土地と建物は誰のものか」「誰と話し合う必要があるか」を明らかにし、その後の手続きへ進みましょう。

